2017年11月28日火曜日

「走り過ぎは体に悪いですよ」って言わないで!

ランニングが趣味の私、この秋10月と11月の2ヶ月間に3つのフルマラソン大会に出場し、すべて3時間台で完走しました。そのための準備として、8月から月300㎞以上のランニングに励んできました。そんな話をすると、多くの方から「そんなに走ったらかえって体に悪いんじゃないですか?本末転倒ですよ!」といった具合にお叱りを受けます。確かに走り過ぎですし体に悪いことは明白です。しかし、そのようなご指摘を受ける度に、私の心中は乱されることになります。それは何故でしょう?実はこの事例の中に、私達が家庭医として患者中心の医療の方法を実践していく上で大変重要な示唆が隠れています。
走り過ぎを指摘してくださる方々には恐らく、ランニングが趣味の人=健康志向の高い人(ランナーは長生きするために走っている)という思い込みがあり、「頑張っているのに早死にしては大変!」と心配してくださっているのかもしれません。しかし、もしも私の趣味が熊と格闘することで、この秋10月と11月の2ヶ月間に3頭のヒグマに戦いを挑み、なんとか生還したところです。と言ったら、あきれて誰も何も言わないかもしれませんね。熊と格闘することを趣味とする知人はいませんが、もしもそのような人がいるとすれば、健康のために戦うのではなく、その人にしか理解できない固有の悦び(萌えツボ)がそこに潜んでいるはずです。そんな人に対して「危ないから止めなさい!」と一方的に言ったところで止めるはずありません。例えが極端になりましたが、ランニングも同様に、主な目的が健康のためではない人もいるのです。ちなみに、私が走る理由は単純で、もともと大好きなお酒が更に美味しくなるからです。う~ん、ますます体に悪そうですね(笑)

さて、医療を提供する私達の中には、医療機関を利用する患者さんは自身の健康のために受診しているし、健康増進のための努力をするべきである。なんて思い込みが染みついているのではないでしょうか?私も「せっかく受診してくれているのに早死にしては大変!」とばかりに強引に禁煙指導したりと、医学的に正しいと思われることをどんなに力説しても、うまくいかないことが多々あります。そんな時には必ずと言っていいほど、詳しい事情や患者さんの想いを深く探らないと理解しにくい固有の物語が潜んでいます。家庭医には、患者さんが想いを充分に吐露できる環境を提供し、引き出された情報をもとに共通の理解基盤を見出し、患者‐医師関係を強化していく能力が求められます。

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