2016年9月26日月曜日

ポートフォリオを用いた医学教育 (第115回FaMReF)

 2016924日 伊達市の保原中央クリニックで、第115回 家庭医療レジデント・フォーラムが開催されました。
 日本プライマリ・ケア連合学会では、家庭医育成のための医学教育の手法として、ポートフォリオを導入し、家庭医療専門医コースの専門医試験にも活用しています。
 ところで、ポートフォリオとは何でしょうか?
 ポートフォリオの本来の意味は「書類を運ぶ平らなケース」です。現在では、特に美術系の分野で「自分の能力を周囲に伝えるための自己作品集」という意味合いで使われ、これまでの仕事や活動の成果を自らの意志で1冊にファイルしたものを指します。
 福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座でもポートフォリオを用いた医学教育を実践しています。今回のフォーラムでも、家庭医療専攻医(家庭医療を学ぶ後期研修医)が作成したポートフォリオを題材に深い議論が加えられました。
 ポートフォリオを用いた学習とは、学習者が診療における断片的な経験を積み重ねていくという偶発的経験の蓄積のみに依存するのではなく、学習者が自らの意思に基づいて、あらかじめ研修すべき内容の全体(家庭医に必要なスキルとマインドなど)をおさえ、「何のために何をやりとげたいか?」「この研修で何を獲得したいのか?」という自らの目標を定め、自らの意思で前向きに学ぶことを援助する学習方法です。つまり、研修期間の終了間際に、研修経験を振り返りながら各項目の診療経験をまとめていく症例報告とは本質的に異なり、研修開始当初から、目標を設定し、エントリーできる事例を意識しながら研修を行います。したがって、学習者は「今のこの経験が、自分が目標とする家庭医になるために必要なスキルのうちの、この領域を学んでいる」ということを常に意識して診療にあたることになります。

 ポートフォリオを創る際に学習者は、その領域で自らが学んだことや獲得した臨床能力を明示し、自らの能力を周囲に理解してもらえるよう配慮します。ポートフォリオを通して、自身の思考過程や、診療において独自に工夫したこと、そして、今後も継続的に成長していくための方略が備わったことが他者に伝わるように記載・作成します。

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