2014年10月30日木曜日

「一体俺は何すりゃいいの?」 途方に暮れる研修医 ~実践家庭医塾~


いわきに地域医療の臨床研修に来てくれた研修医の学びの経験の発表の機会として定着しつつある、家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾

今回は、一見して急性の問題がなさそうに見える外来初診の高齢患者を前に、医師として一体何をして良いのかが分からずに、思考停止してしまったという研修医の体験をもとに、医師がプロとして高齢者のケアに関わっていくためのヒントを提示してもらった。

高齢者を総合的に評価し、ケアのプランを立てていく中で、家族もケアの対象であるという視点は言うまでもなく重要であるし、その結果、施設入所という選択に至るケースもあるだろう。
家族の負担は減るし、そもそも支える家族がいない患者さんにとってはベストな選択かもしれない。

しかし、ここに一つの違和感を禁じえない。
これはあくまでも、家族やケアを提供する立場の意見であり、ここに本人が不在になりかねないからだ。

本人は家族に遠慮して、住み慣れた家を離れることを受け入れたのではないか?
環境の変化にうまく順応できているだろうか?
患者本人が求める健康への希望や不安や恐れの体験に対して、充分に寄り添えているか?
患者中心の医療の方法のはじめの一歩に、いま一度立ち返ってみる習慣をつけようと思った。

で、頑張って勉強すると、やはりご褒美が待っているものだ。


2014年10月19日日曜日

オランダに学ぶ家庭医療 ~第96回FaMReF@喜多方~


秋晴れの日曜。
福島県内は、郡山で開催されているB1グランプリで盛り上がっているが、今朝はいわきを出発し、郡山をスルーして、美しい磐梯山の懐も通過して、喜多方入り!

今日は第96回FaMReF@喜多方
そう、紅葉も始まった絶好の行楽日和でもお勉強である。


当講座では、新人を対象にした海外の家庭医療先進地視察が好例となっている。
今年の第一陣はオランダ隊!
一週間の視察を終えて帰国したばかりのレジデントらがその報告をしてくれた。
診療記録がそのままプライマリ・ケア領域の疫学的なビッグデータとして研究に活用できるシステム、結果として多くの家庭医が研究を意識しながら診療していること、充実した外来教育のシステム、活気あるカンファレンス、美しい診療環境...

世界トップクラスの家庭医の診療・教育・研究の現場を実際に目の当たりにして、見るもの聴くものすべてに、強い印象を受けて、自分たちが目指すべき具体的な目標を見つけ、高いモチベーションを獲得して帰ってきたことがよく伝わってきた。


次に、今回は急遽 韓国家庭医学会 秋期学術大会に招待されてポスター発表してきたレジデントからの報告。
韓国でも家庭医が増えてきて、医療機関の規模を問わず、(賛否はあるらしいものの)大病院の中でも活躍していて、持っているスキルも様々で、お国柄 女性の脱毛処理まで自身で行う家庭医も珍しくないとのこと。


レジデント持ち回りのプレゼン
国の政策を知り、理解し、活用し、所属医療機関を健全に経営し、社会的役割を果たしていくことも家庭医に求められる重要な能力である。
今回は臨床医としての立場よりも、あえて制度・経営という視点に重きをおいて、在宅医療の業務改善をテーマにまとめてくれた。
医療費は医療の利用者・医療職員双方に、結局は国民一人ひとりにふりかかってくる国全体の問題である。
病院病床・在院看取りが頭打ちとなり、国の政策としては、かかりつけ医として責任をもって看取りまで在宅で管理する医療機関を評価する方向に改定されているので、その意図が反映されるよう、主治医としての責任を果たしている医療機関は、終末期に算定できる種々の診療報酬をきちんと請求する責任がある。普段あまり意識していない視点を与えてくれる内容だった。
国の政策も、限られた医療資源を有効活用できるような視点で舵をとってもらいたい。


最後に主任教授によるCinemeducation
「カルテット!人生のオペラハウス」(2012)
イギリスの田園地帯にある、引退した音楽家たちのための老人ホーム
その存亡をかけ、一致団結して いま一度音楽に覚醒する入所者たち
高齢者のケアにおいて、共通の興味や、輝ける姿、認められる喜びへの配慮が、第三のADL(Advanced ADL)の維持、生きがいの維持につながる。
日本の高齢者施設は、最低限の 衣・食・住 以外のリクリエーションはかなり画一的で、個々の人生を充分に尊重できていないかもしれない。
そう言う意味では、今後の高齢者ケアの環境を整えていく上で、とても参考になる題材であった。

2014年10月18日土曜日

美味い店は流行る 美味い医療機関とは?



昨夜は「かしま病院」での地域医療研修プログラムを宣伝しに江戸に出張だった。

2013年度から臨床研修施設のひとつとして「かしま病院」を加えていただいている、東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修(地域医療)プログラム。
今年度は7名を受け入れ、現在4人目が鋭意研修中。

研修医には、地域における家庭医の役割や、患者中心の医療の方法を実践しながら深く学んでもらい、その成果を実践家庭医塾などで発表してもらっている。

研修を終えた多くの研修医からは「大学病院では決して経験できない貴重な学びを得ることができた」という旨のありがたい感想が寄せられていて、教育担当として、ますますやりがいを覚え、熱心な研修に心から感謝している。

都心の大学病院で学ぶ臨床研修医のみなさん。
来年度も1人でも多くの研修医を受け入れて一緒に学びたいものである。
そして、来年度はさらに充実した地域医療研修を提供できるように、プログラムと教育体制を工夫していきたいと思う。

いわきでの研修が、医療人としての生涯の財産になるように…

で、私のプレゼンでは、認知症の高齢者に初診で遭遇した場合を例に、医師としてどう対応するのかを、診療に役立つ具体的なスキルも紹介しながら、研修を通して実際に何をどう学んでいけるのかを伝えたつもりである。
他の医療機関では、施設や土地柄の紹介が中心だったので、自分のやり方で良かったかどうかはさておき、少なくとも異彩は放っていたと思う。
幸い、今年は説明会の後に懇親会も用意していただけたので、興味のあるレジデントの皆さんには、施設や土地柄の紹介も含め、いわきの詳しい現状なども補足説明することができた。



そのまま新橋で反省会。
憧れのガード下のオッサン!
以前から気になりつつも、いつも混んでいて入れなかったお店への潜入に成功。
ものすごい活気!
でも意外に安くはない。
では何故繁盛しているのか?
単純に美味いからだと感じた。

そう、美味かった!

不景気だろうがなんだろうが、結局は客が求めるものを提供すれば、客は勝手に集まる。

医療機関はどうだろう?
医療の利用者である患者さんにとって「美味い」とは?
何をもって患者さんが「美味い」と判断するかが曖昧な世界である。
例えば、長生きさせることができることが「美味い」医者の条件の1つだとして、どの医者にかかっていれば最終的に長生きさせてもらえるかどうかなんて、かかり始めるときには容易に分かりっこない。どんなに優れた予防医療を提供していても...
逆に、患者さんが「美味い」かどうか判断できるとすれば、痛みや不眠など既に目の前にある苦痛をすぐに取り除いてくれるかどうかである。迷わず強い薬を使えば、患者さんはその時は「美味い」と感じるだろう。たとえ、その強い痛み止めや睡眠薬が、将来の転倒・骨折などの大怪我の原因になったとしても...
せめて別の立場の医療機関の利用者=研修医には、各医療機関が提供する研修プログラムが、自分にとって「美味い」研修かどうかをしっかり見極めて欲しいものだ。
そして、医師不足だろうがなんだろうが、研修医が求めるものを提供しまくって、研修医が勝手に集まるような魅力的な研修プログラムが、今のいわきには必要である。

2014年10月11日土曜日

あたりまえの生活 あたりまえの介護

快晴のアクアマリンパーク。
小名浜地区地域ケア推進会議主催の小名浜地区認知症在宅ケア講演会に参加した。

第一部
「認知症の予防と理解」~地域で生活すること~

中村病院 中村雅英理事長先生によるユーモアある詳しく盛り沢山な内容の解説。
麗らかな土曜の午後にもかかわらず、大勢の市民のみなさんが、メモをとりながら熱心に耳を傾けていた。


第二部
「認知症の妻と向き合うパートナー」
交易社団法人 認知症の人と家族の会 福島県支部 いわき地区会の小野英人氏

小野さんは映画「フラガール」で蒼井優さんが演じた小野恵美子さんの夫。
アルツハイマー病と診断された妻を自宅で介護している。
「妻のために○○してあげている」では、介護される側も、介護する側も苦しくなる。
認知症が進んでもなお、心や感情が息づいているからだ!
親が赤ん坊とともに成長していくように、まさに二人三脚で、一人では出来ないことを一緒に寄り添い歩んでゆく…
介護の実践を通した生の声は、参加者の心に響いていた。

超高齢社会を前に私たちが見直すべき原点回帰。

あたりまえに生まれ、あたりまえに育ってゆくように
あたりまえに衰えゆき、あたりまえに看取られてゆく…

台風が近づく週末。
そんな、自然な生老病死が叶えられる地域社会を創っていきたいと強く思った。