2014年12月20日土曜日

今年の学びを振り返ってみよう ~第98回 忘年FaMReF@福島医大~

今年最後の家庭医療レジデント・フォーラム


今回のメインテーマは、終末期の医療における患者とのコミュニケーション

あまり話をしない患者さん…
声をかけづらい雰囲気…医師としてどうするか?

家庭医療後期研修医の経験事例
患者のネガティブな発言や雰囲気に、研修医自身もネガティブな感情になり、回診が苦痛に感じたりもしたという。
それでも、何を話すわけでもなく根気づよくベッドサイドに通い、辛い時間を共有し続けながら、患者さんの人生そのもの・背景に迫ることで、それ自体が患者さんを癒し、コミュニケーションの困難さが解消された体験を紹介してくれた。
行動理論の適用の難しさを認識するとともに、その困難な経験の積み重ねを次に活かしていくことが、我々に求められていることを一同再確認した。



引き続いて講座の忘年会へと突入!
個人的にも今年を振り返ってみた。

今年は、いわき市医師会理事に選任され、右も左も分からず戸惑いながらも生涯教育・学術担当理事としての活動をさせていただいた。
理事会などをとおして、非常に厳しい状況の中でも、いわきの医療をなんとかしようと尽力している熱き志を持った医師たちが沢山いることを肌で感じることができた。
また、今年は非医療従事者向けの教育の機会に恵まれた一年であった。
毎年恒例の小学生向けの医師職業体験プログラム「キッズ医者かしま」の企画だけでなく、学校や幼稚園の職員・保護者向けの食物アレルギーに関する講習会の講師、いわき市内の中学校の生徒会役員を中心に志高い中学生達を対象としたワークショップ「いわき志塾」の講師、船舶衛生管理者を目指す水産学科の卒業生への講義、教育委員会の先生方や学校の先生方との出会い…
今年は私自身の社会勉強に終始した感じではあったが、来年は実際の社会貢献に繋げられるように活動を続けていきたい。

2014年12月12日金曜日

極上の空間に酔いしれて ~平成26年 養生会大忘年会~


2014年12月11日
昨夜は養生会恒例の大忘年会
職員代表で構成される職員の会が多忙の業務の合間を割いて鋭意準備に準備を重ねてたどり着いた「極上のおもてなしの空間」
まさに晴れ舞台とも言うべき目出度いひと時

だから、職員の会会長の開会宣言には重い想いが乗るのである

今年は養生会にとってメチャクチャ大変な一年だった
なんといっても電子カルテの導入・・・
医療政策転換という名の荒波の中、病棟再編という大きな舵取りもあった
それでもなんとか全職員の血と涙の努力の甲斐あって今日がある

ここで働くことができることへの有り難みを再確認し、感謝の気持ちを強くする夜(~翌朝)

当然、とことん呑まずにはいられないし、朝までとことん歌い、踊り、語り、そして一年後のご褒美に向かって、わずかな仮眠の後に何事もなかったように また働きだすのであった




2014年12月11日木曜日

たった一回の後悔が繋ぐ団結力 ~生きざまそのものを写す鏡:忘年会~

熱き血潮の医師いわく

「病院の忘年会で、たった一度だけ気合の入っていない演技をしたことがある。いまでも後悔している…」

それ以来、一年を締めくくるべき忘年会への思い入れが猛烈に強くなったという。
そして今年も周囲を圧倒する勢いで、真剣かつ熱心に率先して余興の準備を進めておられる。
周りの医局員たちも、その勢いに牽引されてやる気スイッチON!

かねてから、かしま病院の忘年会の熱さには毎年圧倒されてきたが、それは紛れもなく こういった職員一人ひとりが 高く舞い上がる想い描いて、花咲く氷の結晶のように輝いていたからに他ならない。

いま、病院ではスタッフ不足の波が、更なる離職を生む負のスパイラルに陥り、各部署からは「通常業務だけで手一杯なので、忘年会の余興の準備どころではない」という声もきこえてくる。
でも、そんな危機的状況だからこそ、馬鹿な医者どもが立ち上がり、体を張ってメッセージを伝えようじゃないか!

いま、私たちが、ここに生きているということ それ自体の尊さや有り難さを実感できるように…

2014年11月27日木曜日

不確実性と向き合うこと ~実践家庭医塾~

月例の家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾
今月も、いわきに地域医療の臨床研修に来てくれている研修医に学びの経験を発表してもらった。


今回、研修医が着目したテーマは、超高齢社会に突入している我が国では、もはや避けては通れない“不確実性への対応”であった。
貧血と心不全を患った とある超高齢者のケアにあたり、どこまでの検査をするべきか?治療はどこまでやるべきか?
まさに不確実性への対応に迫られた体験をもとに、気づいたことや学んだことを見事にまとめあげてくれた。


そもそも、医療には100%確実で安全なものは、検査においても治療においても一つしか存在しない。
その一つとは遅かれ早かれ全員に平等にいつかお迎えが来ること。
極端な話をすれば、医療を利用すると決めた時点で、そのことが裏目に出て命に関わることもあるという現実を受け入れなければならない。
治療や検査をするべきかどうか迷うぐらいなら、むしろ何もしない方がいいかもしれない。
医者に殺されることを100%防ぐ唯一の手段は、医者にかからないことである。
逆に、医療を利用すれば、結果として不利益を被ることもありうるという大前提を理解せずに、検査・治療方針に関する選択の自由なんてありえない。
そのことを許容できないのであれば、医療を利用する権利はないと思う。
医療を受けるリスクを受容するかわりに、医療の恩恵を獲得にいく。
医療とて、賭け事や勝負の要素がある。
そして、患者が高齢であればあるほど、死が不可避な状況が多くなり、どんな戦術をとろうとも、はじめから負け戦の様相が強くなることもまた事実。

こういった大前提を医療の利用者に十分に理解してもらって、ようやく同じ土俵に乗り、そこから各々の倫理観や哲学・死生観などを考慮して、個別の方針決定をしていくという過程には、多彩なコミュニケーション能力・多大な労力や時間を要する。
したがって、こういった内容の話し合いは、例えば患者さんが既に急変し切迫した状況下になってしまった後に家族とじっくり冷静に相談するなんて離れ業はほぼ無理である。
だからこそ、土壇場になってバタバタするのではなく、かかりつけ医の責務として日頃から患者本人の考えを中心とした医療提供に関する要望。特に終末期の栄養管理や延命処置等に関する重要事項に関して予め決めておくとよいし、それは本来そうやって時間をかけて行うべき内容である。
こうした努力を積み重ねて、不要な入院や救急搬送、そして何よりも患者本人に無駄な苦痛を強いる事態を回避できる社会を創っていこうと強く思った。

2014年11月26日水曜日

医療機関を飛び出してみよう! ~地域医療研修~

大学病院の臨床研修医をおあずかりして、地域医療研修を提供しているわけだが、せっかくなので、ここにしかない医療を存分に体験して欲しいと考えている。
今回は、学校教職員向けのエピペン出前講座の講師を務めてもらった。

いわきに来るまで、自分にこのような役目が回ってくることは想像だにできなかったという研修医。
病院で治療対象者が来院するのを待ち受けているだけでは決してできない こういった活動を通して、地域を診るということの意味を身を持って深く理解し、医療のプロとして地域に切り込んでいったことで新しい視野を持てたようである。
ここでの経験を、これからの保健活動に存分に活かしてもらいたい。



キッザニアでもキッズ医者でもない“シップ医者かしま”

船舶に乗り組む衛生管理者という資格をご存知だろうか?
資格を取得するためには、国土交通大臣が執行する「船舶に乗り組む衛生管理者試験」に合格するか、これと同等以上の医学知識・技能を有すると認められ、衛生管理者適任証書の交付を受ける必要がある。
衛生管理者の中でも船舶の航行中という特殊な労務環境が故、薬剤投与や注射、縫合、止血処置などの医療行為が緊急処置として部分的に許されている。
いわきでは、いわき海星高校の卒業生たちがこの資格を目指して勉強しており、今年度から当法人スタッフが医学講習の講師を担当することになり、今月から初回講習開始となった。

考えてみれば、彼らは船上で、医学的なことについて、なんでも相談に乗り、同じ屋根の下というか底の上に住み、家族同様の仲で半年とかまとまった期間ずっと継続的に関わり、予防的な観点からもアドバイスし、気軽に相談できる身近で頼りになる存在になることを目指す必要がある。
まさに、船上で質の高いプライマリ・ケアを提供できる能力が求められる大変エキサイティングな仕事だ。
そんな彼らの教育を担当できるのはとても嬉しい。
思わずこのプログラムを“シップ医者かしま”と命名してしまった。(非公認)

まずは、彼らに これまで医療を利用してきた立場から 病気の体験を語ってもらった。
そうした経験や興味がそのまま これからの医療を提供する立場にも役立つことを伝えたくて…

それにしても、日頃は真面目な先生方のご指導を受けている生徒の皆さん達にとって、オイラのように授業中に急に奇声を発したり挙動不審になったりする変人と接する機会はほぼ皆無らしく、昼下がりの気怠い微妙な時間帯(しかもたっぷり3時間)にもかかわらず、終始目を丸くして珍獣見物してくれた。

何より嬉しかったのは、生徒さんが講義で学んだことを船上だけでなく常日頃から活用できるようにしっかり身につけたいと言ってくれたこと。そして、医学教育のフィールドは、地域を基盤として無限に拡がっていることを気づかせてもらった。今後も彼らの熱意に応えてますます楽しい授業を展開していきたいと思う。


2014年11月15日土曜日

うばすて山を復活させろ! スウェーデンに学ぶ超高齢社会の看取りのかたち

「うばすて山を復活させろ!」

新潮75 特集 どうする超高齢社会!(新潮45 2013⑪別冊)で、ビートたけし氏が提言されている。

うばすて山が実在したかどうかは諸説あり定かではないが、超高齢社会をむかえる日本において、現代版の実質“うばすて山”は既に存在する。

認知症や身体機能低下などにより、社会貢献しにくくなった高齢者を、家族の代わりに病院や施設(入所や通所サービス)でまとめてお世話するという構造は、うばすて山となんら変わりない。
核家族化が進み、近所付き合いが希薄になり、家族力や地域力が衰えた現代だからこそ、現代型うばすて山構想は積極的に推し進めるべきなのではないか?

本来、うばすて山であれば、急変時の蘇生や、摂食不能時の栄養管理を希望しないという(少なくとも家族の)リビングウィルが確認できているということが大前提にあり、例外なくいわゆる自然死をむかえていただろう。
現代は、その辺が曖昧なままケアが続けられ、いざ「食べられなくなった」「急変した」段階で慌てれ医療を動員するという場面に頻繁に遭遇する。


2014年11月14日、前・駐スウェーデン日本国特命全権大使、国際医療福祉大学大学院 渡邉芳樹教授を いわきにお迎えして、スウェーデンの医療・介護について学ぶ機会を得た。
その中で印象的だったのは、スウェーデン人の死生観。
「食べられなくなったら死ぬものだ」として「生活の中の自然の死」に委ね「尊厳」がキーワードになる社会。
もしも病院で朝冷たくなっていでも、それを自然死として受け入れ、何も文句は言わない。
明確な終末期であれば、死亡診断はコメディカルが代行できる。
そんな個の強さがそこにはあるという。

人は弱いものとして「思いやりと支え合い」を重視する日本とは、一見正反対のように思えるが、強固な「思いやりと支え合い」がある日本だからこそ、もっと上手に素敵でハートフルな“うばすて山”を再建出来るのではないか?と夢想した。

暑い夏を再現! ~学生・研修医のための総合診療医セミナー in 東北~

広瀬~川~ 流れる岸辺~
初雪の宮城で暑い夏を再現!

ということで、猛暑の湯河原で行われた「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」の中から厳選したセッションを仙台でアンコール開催。

妥当かどうかは分からないが、私のセッション「東日本大震災に学ぶ複合災害における家庭医の役割」も、栄えある厳選ラインナップに混ぜていただいた。
夏期セミナーでは、熱き学生さん達からキビシー評価をいただいていたので予測はしていたが、参加者内訳は、学生よりも すでに実診療で活躍されている医師中心。
あらためて「現場の人間 好みの企画なのかなぁ~」と再認識した次第である。

超高齢社会をむかえる これからの日本のプライマリ・ケアの現場で起きる問題の多くは、複合災害医療の現場で私たちが経験している状況と酷似しているのだが、このことは 確かに学生さんには まだ実感しにくいかもしれない。
地震・津波・原子力災害・風評被害・被災者同士の軋轢などなど、今まで経験のなかったような現在進行形の複合災害の中、私たちが直面している現実は、災害医療に特化したスキルだけで解決できるほど甘いもんじゃなくて、通常のマニュアルやシュミレーションがほとんど役に立たなくて、既存の災害医療支援体制も現状にうまくマッチせず、残酷なほどに思い通りにさせてもらえないことばかり・・・
医師が格好よく活躍できる状況もなく、むしろ無力感に苛まれ、そんなもどかしさの中、悩み苦しんでいる人たちが沢山いる。
それでも未来を見据えて歩み続けている人たちがいて、その地道な活動自体が、壊れた地域に新しい息吹をもたらし、家庭医療の発展と日本の未来を切り拓く「FRONTIER」そのものになるのである。
このことを強く熱く伝えたいという想いには何ら迷いはないし、実際の現場で未だもがき続けている人間にしか伝えられないことを、縁あってこのセッションを選択してくれた皆さんに全力で伝えることが、私に課せたれた責務だと思い、できることはやった。
いただいたフィードバックを見る限り、複合災害時に、家庭医がプライマリ・ケアのプロとして、地域の保健に積極的に関わることが、どれだけ重要であるかを、今回は夏よりも少しは上手に伝えられたような感じがする。

でも何だかんだ言ったって「家庭医は夜育つ」というわけで、やることはやったし、今宵はワイワイ呑ませていただいた。
ちなみにこの名言は、藤原靖士先生によるものだそうで、単に呑むと家庭医になれるということではなくて、呑んでも呑まなくても、学ぶということに関して、枠組みにとらわれずに、いつでもどこでも、誰からでも学ぶ姿勢が、家庭医には大事だよ!というメッセージだそうです。
なるほど納得。



東北人は寡黙で控えめなので目立ちはしないけれど、ちゃんとポテンシャルを持っていて、それはもう既に鉄砲水のように噴出し始めている。
今回の参加者と講師陣から そんなパワーを しかと受け取りつつ極厚タンをいただいて仙台をあとにした。






2014年11月13日木曜日

要らないの全部消しちゃう? ~新しい返信の形~


とても大切な方から披露宴のご案内をいただいた。
最近、密かにこういうのが流行っているようなので、
思わず返事にも気合が入ってしまった。
「度肝抜かれた」
という感想をもらえてご満悦。
一応 喜んでもらえたようで良かった。

2014年11月12日水曜日

よもやの謝罪会見? ~いわき市医師会 第43回 市民公開講座PRの巻~

人生初の記者会見にのぞんだ。

医師の記者会見といえば・・・

フラッシュの嵐の中、(お子様の)失神注意のテロップが流れ、偉い人たちが深々と頭を下げて

「申し訳ございませんでした~!!!」 というのが定番か?

しかし 幸い今回は、案外平和なシチュエーションで、単なる珍獣(俺)公開会見って感じの様相・・・

なんのことはない!

目的は、小生が当日総合司会を仰せつかっている いわき市医師会主催の第43回 市民公開講座の宣伝なり。

今回のテーマは「生活習慣と転倒骨折」

先日のいわきでの家庭医療レジデント・フォーラムで、転倒・骨折の予防法って何がいいんだろう?
などというクリニカル・クエスチョンが浮上し、若干熱く議論した状況下なので、かなりタイムリーな企画。

転倒・骨折は、それまで健康だったはずのひとが、急に寝たきりになってしまうかもしれないという脅威をはらんでいる。

転びにくいようにバリアフリーにするなどの環境整備
転倒防止の見守りを強化し、体力の維持向上を目指す介護・福祉の充実
骨粗鬆症の治療や、鎮静作用のある薬剤の減量・中止など医療の質の改善・・・

医療・福祉・行政などの多組織共働がなければ成り立たない複雑で近道のない問題。

この難しい問題の打開策として、栄養管理をベースにした体力・身体機能の向上を目指すことが挙げられる。

では、市民一人ひとりがどういった日常生活をおくれば、体力・身体機能の向上を実現し、転倒・骨折のリスクを低減できるのか?

こういった情報を市民の皆さんと共有し、議論できる場にしようと考えている。

いわき市医師会 第43回 市民公開講座
2014年11月29日(土)14時~
いわき市総合保健福祉センター 多目的ホール
「生活習慣と転倒骨折」

参加無料で事前登録も要らないのでお気軽に足を運んでいただきたい。

2014年11月24日 福島民報

2014年11月9日日曜日

ようこそいわきへ! ~第97回 FaMReF@いわき~

県内各地で行われる月例の講座の勉強会
家庭医療レジデント・フォーラム(Family Medicine Resident Forum: FaMReF)
今日の会場はいわき!

「力を合わせて全体の進歩を図る」
かしま病院の病棟にある熱い日めくりカレンダーも、いわき開催を祝福しているようだ。


レジデントからの話題提起

日々の診療を通して高齢者の転倒の問題は多いし重大であるということを実感をしているというあるレジデント

しかしながら、転倒・骨折を予防するために有効な手段や・指導方法は、案外良く分からなかったりする。

玄関などのマットにつまずかないように配慮する
ヒッププロテクター
バリアフリーや手すりなどのハード面の整備
栄養管理や健康体操などによる身体機能の維持・向上
多職種の意見や協力をあおぐ
薬剤の副作用の可能性の吟味・・・

本当に有効なのか?
何が最も有用で効率的なのか?
この問題ひとつとっても臨床上の疑問は尽きない・・・
こういったところから新しい研究テーマを見出していこう。


次のレジデントは、最近たまたま予測し難いような病態の患者さんを立て続けに経験し、ある程度検査や治療ができる環境だと、検査や治療をどこまでやるべきか迷うという。

まず、難しい病態なのにどうして診断できたのかを振り返ってみよう。
そこに、どんな時は検査を省けるのかというヒントが隠されているかもしれない。

次に、診断はついたものの、どこまでの治療をすれば良いか?
超高齢社会では、患者がどうありたいのかという健康観を考慮せずに治療方針は決められない。
しかも、多様な要素が複雑に絡み合ったなかで、総合的に判断してくことが求められる。

一人ひとりの患者さんに対して、この時は、こう判断してこうした。
そういった積み重ねのデータが、医療経済への寄与も含め、今後の医療界の財産にできるよう、まとめあげていくことになった。

そして本日のメインのプレゼンは、後期研修医のS先生
「地産地消」と題し、いわきへの熱い思いを持つ仲間として、地元から地元を支える医療人を輩出していこうという、妄想半分・本気半分の作戦会議となった。
震災を経験した子供たちは、社会貢献したいという傾向が強まったという(ベネッセ教育総合研究所調べ http://berd.benesse.jp/magazine/opinion/index2.php?id=2013 )
地元愛の強い若者の夢が叶えられるように、私たちが憧れの大人として影響を与えていこうじゃないか!

2014年11月2日日曜日

はばたこう いわきから 日本へ 世界へ 未来へ ~いわき志塾~


 いわき生徒会長サミットをご存知だろうか?
斯く言う私も昨日知ったようなものだが・・・

震災の直前から準備が進んでいて、2011年度はじめから立ち上がる予定だったそうだが、震災の影響で延期になっていた。
公益財団法人 東日本大震災復興支援財団の「福島こども力プロジェクト」の支援を受け、なんとか震災の年に立ち上げることができたそうだ。
もともと「30年後のいわきのリーダーを育てよう!」ということで始まった企画だったが、震災直後に大多数の子供たちが一時いわきを離れたという現実に直面した時、いわき市教育委員会の先生方は「これでは未来のいわきはない」と危機感を持ち、もっともっと、「いわきじゃなくちゃダメなんだ!」と、いわきを熱く愛する若者を育てていかなければならないと痛感し、ますます熱意をもってこのプロジェクトを推進しているそうだ。
今年で4期目に突入し、生徒会役員でなくとも、志さえあれば参加は自由となり、いわきグローバルアカデミー「いわき志塾」と命名された。
各界で働く大人を講師に招いて、小グループに分かれて、講師の生き様についてレクチャーを受け、次のセッションでは、インプットされた情報から得た個々の考えをグループ内でアウトプット。最後のセッションでは、各グループが参加者全員に向けてプレゼンするという構造。
で、今回(第6回)のテーマが医療ということで、講師としてお声がけいただき、喜んで馳せ参じた次第である。







講義では、高度先進医療を担う各科専門医と、プライマリ・ケアを担う町医者と、2種類の医師が上手に分業できるとよい。ということと、日本ではプライマリ・ケアを担う町医者を育てる仕組みの整備が立ち遅れている事情。そして、現状で起きている問題を踏まえて、自分が家庭医の育成をライフワークにする断固たる決意ができた過程。福島では(もちろんいわきでも)安心して家庭医を目指すことができるように教育システムを整備していることなどを伝えた。
一通り話したあと、さすが熱い連中だけあって、「これだけは譲れないものは何ですか?」という熱苦しい質問が飛んできた。
「人のために生きること、それは結局自分を幸せにする」
などとキザなセリフを吐いたのだが、うなずきながら「強く共感します」と、すんなり受け入れる凄い奴ら!
アウトプットのワークはとにかく感心した。
これまた立候補制かつ投票制のチームリーダーが、見事にみんなの意見を限られた時間内でまとめていく・・・
今期6回目ということで、だいぶ慣れてきたとのことだが、それにしても学習能力の高さが素晴らしい。


日頃、時間ばかり奪われながら、ちっとも役に立たない大人の会議を数多く目の当たりにしているので、「物事を決める時はこうやればいいのか~」と大変感銘を受けた。


全体発表は、各班それぞれの講師の熱い志を個性的に表現してくれて非常に楽しく拝見した。


もっとも嬉しかったことは、いわき志塾にキッズ医者かしまの研修修了生(OG)がいたことと、彼女が、医師を目指す「断固たる決意ができた」と発言してくれたことだ。
地道な努力を続けるとき、「本当に実がなる時がくるのだろうか?」と不安に思い心折れそうになることもある。しかし、やはり諦めることなく前に進むこと、目の前のやるべきことを続けることが最も大事なことであると確信した。
「人のために生きること、それは結局自分を幸せにする」
この言葉の意味をきちんと理解できる若者がワンサカいるこの地は、まだまだ死んでいない。
子供たちのキラキラした目を見て、いわきの未来に光が差すのを感じた。

そして、子供たちを熱く見守る教育のプロの先生方と知り合うことができたのも、昨日の大きな収穫だった!
未来を創る教育を、力を合わせて成し遂げよう!









2014年11月1日土曜日

若いエキスが老体にもたらすもの ~家庭医療後期研修医歓送迎会~

10月1日からの下半期、福島県内で働く福島県立医科大学家庭医療学専門医コースの研修医達の配属先がマイナーチェンジ!
かしま病院でも、一人出て一人はいる模様替え。
10月31日、あっという間にひと月が過ぎ去ってしまったが、遅ればせながらの歓送迎会。
かしま病院では、予防医学から、急性期疾患の診断・治療、慢性期疾患管理、リハビリテーション、在宅医療、介護・福祉支援まで、地域の医療・介護・福祉の連携と向上に力を入れている。
かしま病院での診療を通して、家庭医を特徴づける能力を充分に活用しながら、他職種との協働、患者・家族背景を考慮したコーディネートを数多く経験することができる。
地域に根差した総合診療医・病院総合医として発展できるベースがもともと備わっていて、まさに地域に生き、地域で働くことのできる医師を育てている。
また、医師不足・偏在が著しい福島県(特にいわき市)では、地域医療のニーズに応えるために、特に一次・二次救急医療において、広範な疾患領域に対応できる診療能力の獲得が求められているが、かしま病院では、救急告示病院として年間1,000件超の救急応需をしていて、複数の健康問題を有した高齢者への対応など、ジェネラリストとしての能力を磨くための環境が整っている。
そして、最大のウリは、他科の先生方が、家庭医の育成に極めて協力的であること。
どんなに忙しくても、教育に熱い!
ジェネラリストが身につけたほうがいいと思う知識やスキルは、惜しげもなく無償の愛で伝授してくださるし、いつも暖かく見守って応援してくださる。
こういった歓送迎会の場で、先生方からコメントを頂戴したりすると、あらためてその愛情の深さを実感する一方で、実はご年配の先生方も、若者の熱意に触発されて自らを奮い立たせているのだということも分かる。
結局は、老体は若者のエキスを吸って生きているのである。
かしまを巣立った研修医達が、かしまで学んだことを更に発展させて活躍している姿は、僕らにとってまさに未来への希望である。
これからの医療を救うカギは教育だと思う。
地域医療の担い手の教育、地域住民への教育、教育者の教育、一つひとつを繋げて世界を動かしていこう。
無理は承知!
だから、出来ないことを嘆くのではなく、出来ることを探していこう。
諦めずに、今できる少しの踏ん張りを積み重ねていけば、未来を変えることはできるはずだ。



2014年10月30日木曜日

「一体俺は何すりゃいいの?」 途方に暮れる研修医 ~実践家庭医塾~


いわきに地域医療の臨床研修に来てくれた研修医の学びの経験の発表の機会として定着しつつある、家庭医療セミナーinいわき 実践家庭医塾

今回は、一見して急性の問題がなさそうに見える外来初診の高齢患者を前に、医師として一体何をして良いのかが分からずに、思考停止してしまったという研修医の体験をもとに、医師がプロとして高齢者のケアに関わっていくためのヒントを提示してもらった。

高齢者を総合的に評価し、ケアのプランを立てていく中で、家族もケアの対象であるという視点は言うまでもなく重要であるし、その結果、施設入所という選択に至るケースもあるだろう。
家族の負担は減るし、そもそも支える家族がいない患者さんにとってはベストな選択かもしれない。

しかし、ここに一つの違和感を禁じえない。
これはあくまでも、家族やケアを提供する立場の意見であり、ここに本人が不在になりかねないからだ。

本人は家族に遠慮して、住み慣れた家を離れることを受け入れたのではないか?
環境の変化にうまく順応できているだろうか?
患者本人が求める健康への希望や不安や恐れの体験に対して、充分に寄り添えているか?
患者中心の医療の方法のはじめの一歩に、いま一度立ち返ってみる習慣をつけようと思った。

で、頑張って勉強すると、やはりご褒美が待っているものだ。


2014年10月19日日曜日

オランダに学ぶ家庭医療 ~第96回FaMReF@喜多方~


秋晴れの日曜。
福島県内は、郡山で開催されているB1グランプリで盛り上がっているが、今朝はいわきを出発し、郡山をスルーして、美しい磐梯山の懐も通過して、喜多方入り!

今日は第96回FaMReF@喜多方
そう、紅葉も始まった絶好の行楽日和でもお勉強である。


当講座では、新人を対象にした海外の家庭医療先進地視察が好例となっている。
今年の第一陣はオランダ隊!
一週間の視察を終えて帰国したばかりのレジデントらがその報告をしてくれた。
診療記録がそのままプライマリ・ケア領域の疫学的なビッグデータとして研究に活用できるシステム、結果として多くの家庭医が研究を意識しながら診療していること、充実した外来教育のシステム、活気あるカンファレンス、美しい診療環境...

世界トップクラスの家庭医の診療・教育・研究の現場を実際に目の当たりにして、見るもの聴くものすべてに、強い印象を受けて、自分たちが目指すべき具体的な目標を見つけ、高いモチベーションを獲得して帰ってきたことがよく伝わってきた。


次に、今回は急遽 韓国家庭医学会 秋期学術大会に招待されてポスター発表してきたレジデントからの報告。
韓国でも家庭医が増えてきて、医療機関の規模を問わず、(賛否はあるらしいものの)大病院の中でも活躍していて、持っているスキルも様々で、お国柄 女性の脱毛処理まで自身で行う家庭医も珍しくないとのこと。


レジデント持ち回りのプレゼン
国の政策を知り、理解し、活用し、所属医療機関を健全に経営し、社会的役割を果たしていくことも家庭医に求められる重要な能力である。
今回は臨床医としての立場よりも、あえて制度・経営という視点に重きをおいて、在宅医療の業務改善をテーマにまとめてくれた。
医療費は医療の利用者・医療職員双方に、結局は国民一人ひとりにふりかかってくる国全体の問題である。
病院病床・在院看取りが頭打ちとなり、国の政策としては、かかりつけ医として責任をもって看取りまで在宅で管理する医療機関を評価する方向に改定されているので、その意図が反映されるよう、主治医としての責任を果たしている医療機関は、終末期に算定できる種々の診療報酬をきちんと請求する責任がある。普段あまり意識していない視点を与えてくれる内容だった。
国の政策も、限られた医療資源を有効活用できるような視点で舵をとってもらいたい。


最後に主任教授によるCinemeducation
「カルテット!人生のオペラハウス」(2012)
イギリスの田園地帯にある、引退した音楽家たちのための老人ホーム
その存亡をかけ、一致団結して いま一度音楽に覚醒する入所者たち
高齢者のケアにおいて、共通の興味や、輝ける姿、認められる喜びへの配慮が、第三のADL(Advanced ADL)の維持、生きがいの維持につながる。
日本の高齢者施設は、最低限の 衣・食・住 以外のリクリエーションはかなり画一的で、個々の人生を充分に尊重できていないかもしれない。
そう言う意味では、今後の高齢者ケアの環境を整えていく上で、とても参考になる題材であった。